最後は何故かガンダムネタに―少年ではなくなった金田一一とドロドロ女社会とダークホースヨガ講師の感想。
内田百閒先生の『ノラや』が面白すぎて目が離せない。
目を離したすきにマンガを読み、本を予約する。
そしてノラを探す旅に出る。
充実した人生である。
しかし、どんなに順風満帆な日々を送っていても、心から悲しみや憎しみが絶えきることはない。
積ん読がまた2センチ高くなったとか、3月は新刊が豊作すぎて更に更に5センチほど成長しそうだとか、そういう問題ではない。
それは生そのものを無にする、本来あり得べかざる出来事…運命と片付ける他ないような、あまりにも予期せぬ終焉。
殺人事件。
金田一37歳の事件簿(3)限定版 (講談社キャラクターズA)
- 作者: さとうふみや,天樹征丸
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2019/02/22
- メディア: コミック
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(何だか悔しいので限定版のリンクを貼った)
積ん読する前に読んで、買って、読んだ、早くも思い出深い1冊。
以下、ネタバレを惜しまない感想。
このシリーズは日本人なら大抵は知っているであろう「金田一少年の事件簿」の続編である。
(こういう書き方はあまり良くないのだろうが、映画ファンなのにジブリ未鑑賞の課長や、マンガ好きなのに「スラムダンク」を読んだことのない四十代には見逃してほしい。ちなみに前者はアサイ「木根さんの1人でキネマ」の主人公、後者は私のこと)
といっても「金田一少年」は続編が多すぎてちょっとすぐにはまとめきれない。
とりあえず今回の作品はタイトルの通り、「金田一少年(本編では高校2年生)が20年の歳月を経た今」という設定で描かれている。
便宜上、「37歳シリーズ」としておく。
私の情報が確かなら、現在、この「37歳シリーズ」が最新の公式金田一少年シリーズである。
少年ではないのでもっと正確に言うと、「金田一耕助の孫、金田一一(はじめ)」シリーズの公式最新作。
(それにしてもフルネームと年齢を続けて書くと「金田一一三十七」とか暗号みたいだな。いとこだかのふみちゃんは本編で小学校3年生だったから今や「金田一二三二十九」か。えっ、若い)
(というかいっそジッチャン回帰で「金田一一(37)の事件簿」ではいかんのだろうか。いかんのだろうな。どうしても犯人っぽくなるもんな)
37歳の金田一はブラックPR会社勤務。平凡な独身サラリーマン。
「金田一少年の事件簿」の決め台詞といえば「(かつて名探偵と言われた)ジッチャンの名にかけて!」(ジッチャンだったりじっちゃんだったりあまり統一されていない)だったが、「37歳シリーズ」では、
「俺はもう謎なんか解きたくないんだ~!」
が追加されている。
どうした、金田一!
少年でなくなって世間の厳しさを知って、探偵ごころも捨ててしまったのか?
それじゃ小城マネージャー(玲香ちゃんの実兄)の思うツボだぞ!
(「名探偵のお孫さんでどんなに事件を解決したって、履歴書にはそんなことを書く欄なんてないんだよ?」とdisられた苦い思い出)
(一応、警察に協力しまくったおかげで警察署で表彰されかけたこともある。明智警視の陰謀でエロビデオ鑑賞会になってしまいおじゃんになったが、もし滞りなく表彰されていても履歴書には記載できないんでしょうか?どうなんでしょうか小城さん?)
金田一の心情はさておき、シリーズの主人公である限り推理はやめられず。
そもそも高遠遙一という仇敵が存在してちょっかいを出してくる以上、放ってもおけず(真面目な話、なんでこのひと死刑にならないの?余罪がありすぎて死刑待ちなの?と思ってたら塀の中から第三者を操って犯罪進行中。と、2巻で判明した)。
その前に金田一の行くところでは何故か、何故だか事件が起きるという大前提的宿命。
「金田一37歳の事件簿」1巻の舞台が元オペラ座館という時点でもうね、金田一の「またかよ!」に全面同意するわ…島ごと沈没させでもしない限り元オペラ座館はネタにされ続けそう。そうなったら悲報島が台頭してくるだけか。
「もう謎は解きたくない」との台詞には、恐らく深い意味はなく、そのままだろう。
ただ平穏に生きていたい。犯罪なんか関わりたくない。だいいち犯罪なんか起きない方がいい。
金田一の健全さがひしひしと伝わってくるが、悲しいけどこれ推理ものなのよね。
というわけで事件は起こる。金田一の目の前で起こる。
3巻は2巻からの続き、タワーマンションのセレブなマダムたちの殺人事件、ごっこ。
これは揶揄でも何でもない。
こんなノリの軽い殺人事件、金田一一史上、そうそうないだろうというくらい、軽い。
良く言えばコミカル。悪く言えば真壁刑事無能。
(高校時代のミステリ研究会所属、推理作家のあの真壁先輩、刑事になって再登場)(まあ、真壁だから無能で当たり前。あのゴーストライターな女の子がいなくちゃ話にならん)
4人のマダムが登場し、うち1人が殺される。
誰が殺されるかは2巻の時点ではっきりと表現されている。
残り3人が結託して殺人を行うことも、同時に明確に描かれている。
3巻ではその実行と、金田一の名推理(?)まで話が進み、肝心の動機の告白が4巻に持ち越される。
正直なところ、私でも解明できるくらいに犯行がずさんすぎて、分からないのは動機だけなのだ。
(いや、ハイヒールは気づかなかったな。もしかして被害者、生きてるのでは?とは推測していた。あまりにもさらっとしていたものだから)
他の3人のマダムたちが勝手に出入りすらできない20階以上、しかも最上階に住んでいる。
40歳の美魔女だが整形だらけ、SNS中毒(スマホ依存?)のパリピ、仲間内ではともかく対外的にはマダムにふさわしい傲慢な振る舞い。このあたりまで2巻で描写されている。
3巻ではそれに、夫はIT企業の社長でシリコンバレーに単身赴任中、子どもは2人いて息子は有名私立一貫校に小学部から入学、のちに娘とともにスイスの中学校(全寮制)に編入、留学中、という情報が追加される。
彼女を殺す3人のマダムたちとは、同じマンションの住人であるだけでなく、そろってヨガスタジオ(イケメンインストラクター付き)に通い、美容目的で韓国旅行に繰り出す間柄。
しかし、最近は夫が現地で浮気をしているとか何とか。
これがどこまで事実かは分からないが、3巻では「夫の浮気を苦にして自殺」…という偽装殺人を、3人のマダムたちによって実行されてしまう。
そしてあっさり金田一にバレる。
(金田一はたまたま、ほんっとうにたまたま、隣人の巨乳シングルマザーが勤めるケータリングサービスの手伝いをしていただけなのだ。そらもう本当に奇遇なことで)
殺人の手順としては、1人が被害者に化けてアリバイを作り、1人が被害者を殴って気絶させ、最後は2人がかりでベランダから落とし、投身自殺を装う。これだけ。
金田一がいなかったらうまくいったかもね!金田一がいなかったらね!駆けつけたの、真壁だし!惜しかったね!
さて、「被害者を殴って気絶させる」フェーズで、加害者の1人が動機をにおわせる言葉を発している。
被害者は、3人の加害者のうちの1人(殴打実行犯)の夫を寝取り(セフレ?)、別の1人に何かをし、また、最年長と思われる3人目の重鎮マダムの子どもにも何かをやらかした、らしい。
いわく、「全部知って、耐えてきた。でも超えてはいけない一線を超えた。もう限界だ」
なお、「超えてはいけない一線」ははっきりしている。
被害者はヨガのイケメンインストラクターとねんごろであった。
彼は加害者マダムたちのアイドル的存在。
それに手をつけたとあっちゃあ、さしもの寛容なマダムたちも堪忍袋の緒が切れた、というわけだ。
何というのか、寝取られるような夫よりヨガインストラクターの件でカッとなる気持ちは、ほんのり分かる気がする。
でも、自分の子どもに、恐らくかなりのことをされ、それでもかろうじて耐えてきたのにインストラクターが後押しに…とは、ちょっと奇妙だ。
そもそも、何故、耐えたのだろう?
具体的なことが不明なので予想しかできないが、やはり最上階に住む女王の気を損ねたらそこに住んでいられないとかだろうか?
しかし、ヨガインストラクターのことが明るみに出るまえに、それぞれがそれなりの苦痛を受けている。
殺人とまで行かずとも、3人そろって文殊の知恵をもうちょっとゆるく働かせられなかったのだろうか。
相手の被害者女性は実質ひとり暮らしだし、いろいろ嫌がらせもできただろうに。
嫌がらせどころか、「必死に耐えて」(それこそずっと殺してやりたいと思っていても、なお耐えて)つい数ヶ月前に海外旅行まで一緒に行っている。
その旅行中も何かがあったとするなら、具体例が挙げられていない柔軟マダムだろうなあ。
(被害者は加害者の忍耐はおろか、彼女たちが「そういう事実があったことを知っていること」すら気づいていなかった模様。少なくとも加害者たちは、「知っているという事実」を隠していたらしい。加害者が「あたしたち、ぜーんぶ知ってたの」「ぜんぶ知って耐えてきた」とこぼす台詞からその状況が覗える)
そこで気になるのは、被害者の長男の経歴。
有名市立校に小学部から入学しておいて、後になってから妹と一緒にスイスの全寮制に留学。
そしてマダムのうちの1人は、子どもに何かをされた様子。
被害者の長男の留学は、より良い教育のためや、箔をつけるためというより、「逃げた」のではないか。
あるいは何かをしてしまったのは妹の方で、兄はそれに付き添っているのかもしれない。
いずれにせよ、わざわざ長男に「最初は有名市立に在学」との設定を与えた理由は何かしらあるのだと思う。
そして、この「何かをされたらしい子ども」の親が後半で重鎮化するマダム。
罪を真っ先に認めたのもこの人。
松竹梅で言ったら松子さんポジですな。金田一の名推理(?)に膝を屈してからは何だか可愛かったし。
(でも自分の子どもよりイケメンインストラクターだとしたら松子姐検定、失格)
4巻は「金田一少年」シリーズ恒例、真犯人(たち)の告白大会で始まり、そこですべてが明らかになり、大体2話ぐらいで終わるだろう。
さぞやドロドロとした女社会の闇が切り開かれるものと期待する。
さあ、大事なのはそこからだ!
「37歳シリーズ」では今回の事件が第2弾。
1巻から2巻を通して行われた第1弾(元オペラ座館改め泊まり込み婚活パーティー会場兼リゾートホテル兼結婚式場事件)は、実はすべて高遠遙一が糸を操っていたというファンにはたまらんオチにつながる。
なら、今回のタワーマンションセレブマダム事件も…!
…どうなの?
あの穴だらけの事件が高遠の計画とか…やだな…。
せめて、それぞれの加害者の動機づくりに関わっているとか(夫の寝取り???)、実は加害者がやったとされていることはすべて高遠が加害者たちにそう思わせた、とか(夫の寝取りレベル…しかもあまり効果ない)。
あののほほんとしたヨガインストラクターが最後のトリガーになったことを思うと、この人が今回の高遠の餌食です説もありそうだけど、ど、どうだろう…?
大体、この事件、タワーマンションとか料理の仕方によってはかなりおいしくなりそうな素材なのに、いまひとつ活かしきれていない。
高遠にとって最も大事な「殺人の美学」はかけらもない。
タワマンとかセレブとかマダムとか、高遠なら鼻で笑い飛ばしそう(それを言ったら婚活パーティー…いや、あれは元オペラ座館だから金田一とは因縁の深い場所で高遠の粋な計らいなのよきっと)。
ただ、ヨガに関しては高遠は興味がありそう。
というわけで、一応ヨガインストラクターに三千点、としておく。
少なくとも意外性はあるよ!意外性だけは!イケメン設定だし!
これで実は真壁が操られてましたとかだったらちょっと高遠の神経を疑う。いくら高遠でもやっていいことと悪いことはあるでしょう。
タワマンマダム事件の後は「京都美人華道家殺人事件」と予告に銘打たれている。
これはなかなか面白そう。やっぱり和風の殺人事件っていいよね。高遠とも親和性が高い(もう金田一は何でもアリなのでひたすら高遠にこだわる。あと明智さん)。
何を見せられても「綺麗ですねえ」としか感想を言えない金田一までは容易に予想できる。
(そういえば3巻でやたらと「なるほどですね」を連発しウザがられていた金田一だが、もともとの口癖か何かだったっけ?)
(あと犯人はやばそうになったら間違ってもメタ的に金田一耕助の話しちゃだめだよ!金田一一、燃えちゃうから。いつもの決めセリフに「その昔、名探偵と言われたジッチャンの名にかけて」とか自虐スパイスふりかけちゃうから)
(今なお金田一耕助は名探偵です。お恥ずかしながら一作しか読んでいないけれど、これから積んでいく予定)
ところで、最初に購入した通常版には「緊急企画!金田一37歳の作品簿」なるジャバラ状の広告が挟まれていた。
「イブニングの一押し作品」を金田一と葉山ちゃんが紹介していく形式。
こういう一工夫があるチラシは嬉しい。ついつい隅まで読んでしまう。
この中で気になったのは、
これ(特装版もあるよ!)と、
クラッシャージョウ REBIRTH(1) (イブニングKC)
- 作者: 針井佑,安彦良和,高千穂遥
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/09/21
- メディア: コミック
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これかなあ。チラシでは2巻が載っていた。
クラッシャージョウ、記憶がおぼろげだけどやっぱり安彦良和の絵だけでピキーンと来るよね。
安彦良和といえば実家にこれを置いたままだな。
そこから連想して、
これも2巻まで持っている。続きは…?ねえ、藤原先生、続きは…?
何だか1998年頃「今世紀中に未完の作品をすべて完結させたい」と仰っていた記憶がありますけれども、わたくしめの気のせいでしょうか?
最後は金田一からだいぶ逸れた。安彦良和からつなげるならこっちにすべきだった
機動戦士ガンダム THE ORIGIN (1) (カドカワコミックス・エース)
- 作者: 安彦良和,矢立肇,富野由悠季
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2002/05/30
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映画版をダイジェスト風にしてNHKで放映するとか、映画ナラティヴが早くも円盤になるとか、私があさってガンダムカフェで00Nightを堪能してくるとか、ガンダムはいつの時代も熱いね!
ところで「ORIGIN」は3巻ぐらいまで読んで実家に預けたまま。
最後まで読みたい…読みたいけどどちらかというとアニメ全話をまた観たい…しかし「ORIGIN」も読みたい…とりあえず積むかなあ。
ガンダムものならこれも好き。
機動戦士ガンダム デイアフタートゥモロー ―カイ・シデンのメモリーより― (1) (角川コミックス・エース)
- 作者: ことぶき つかさ
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/10/26
- メディア: コミック
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機動戦士Zガンダム デイアフタートゥモロー カイ・シデンのレポートより (1) (カドカワコミックスAエース)
- 作者: ことぶきつかさ,矢立肇,富野由悠季
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/04/26
- メディア: コミック
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カイ・シデンとなら結婚してもいいわあ。
ことぶきつかささんが「Zガンダム」を完全マンガ化してくださらないかしら…って、あれ?これ金田一の記事…。
なんとかフィギュアつながりで金田一耕助フィギュアの話をして強引にまとめる予定だったけれど、また今度。
推理もので続きもの(1巻1事件解決形式でない)ゆえに、積むのはあまりにハイリスク。逆に、このシリーズは大体、次巻に持ち越すから、まとめて読みたいなら次巻まで積んでいてもいるのも悪くない。限定の存在を知らずにいられるかもしれないというメリットもある。特に高遠の出番を待ちわびるなら積むべき。最後まで出てこない可能性が非常に高いから(今回は全く出てこない危険性も…)。積まずに読むなら読んだ後の置き場所をお忘れなく。私は通常版と限定版で2冊も持っているからね、さすがに両方をなくしそうにないのが強みね。それもこれも積まずに読んだおかげよね。こういうの何て言うんだっけ?ヒョウタンから高遠?